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▼ 「人間像」第116号 前半   引用
  あらや   ..2023/11/03(金) 11:38  No.1012
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『あの若者がはだか馬に乗って、何頭もの馬をたくみに追い込んでいくのを見ていると、オレの青春を埋めた満州での日々が思い出されてならぬ。なんとか、あの青年と会って話してみたい』
 斎藤昭は毎朝、台町の家を出て近くの磐井川の堤防に、ごじまんの愛馬「ときいわ号」を運動がてら走らせにいく。少年時代、北海道釧路の大湿原で牧夫をしていた頃の彼は、他の親方たちや先輩の牧夫連中と同様、よほどの遠出か改まった用事ででもない限り鞍など置いたことはなく、せいぜい古毛布をハンケチほどの小さに切った四角なきれっぱしを尻の下に挟むぐらいのことで、はだか馬を乗り回していた。それで彼は、故郷の一関に帰り数年たったいまも、「ときいわ号」をはだか馬のまま自由自在に走らせるのが快いのである。
(朽木寒三「小山田さんの鉄砲」)

この「斎藤昭」シリーズ、最高。今回は特に、元馬賊の老人と博労の若者の出合いとか、朽木さんでなければ絶対に書けない世界ではあります。舞台が釧路(北海道)と岩手県というのも私好みだし。しばらくご無沙汰していた朽木さんの「人間像」復帰を心から喜んでいます。

第115号が完了した翌日から「人間像」第116号作業を開始しています。『小山田さんの鉄砲』の次は、千田三四郎『ぎんぎらぎん』、丸本明子『竜の落し子』、矢塚鷹夫(新同人)『吸血鬼物語』、針田和明『雄冬の冷水』と続きます。

 
▼ 針田和明詩集   引用
  あらや   ..2023/11/10(金) 18:26  No.1013
   俺の冷蔵庫

冷蔵庫をあけて
俺はめずらしい食い物を
掌にとっては口に運んだ
鮭の切り身、筋子、
豚肉、白菜、人参
まだ食いたりない気がしたが
中はもう空っぽだ

二階でふるえている人間どもに
俺は掌をふって合図をしたが
だれ一人として
降りてこない
用心深い人間どもよ
ごちそうさん

山へ帰る途中
牧場で牛を一頭
失敬しようとおもったが
あいにくとトンマな牛は
いなかった
仕方がないとあきらめて
俺は西瓜畑に入り
大きいのを二十個ばかり割って
ガブガブと水分を補った

以下、略。人間像ライブラリーの『針田和明詩集』をお楽しみください。

 
▼ 「人間像」第116号 後半   引用
  あらや   ..2023/11/10(金) 18:30  No.1014
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 間に別冊を発行したこともあるが、遅刊の原因は原稿が期日に揃わないことである。結構忙しい針田が毎号書いているのだから、多忙は理由にならないと思う。この号の中で佐々木が書いているように「枯渇」してしまったのであろうか。そんな我々の仲間に若い矢塚鷹夫が参加した。成長を期待すると同時に、潤滑剤となって古い同人達の再起にも役立ってほしいものである。
(「人間像」第116号/編集後記)

その矢塚さんのデビュー作『吸血鬼物語』の冒頭。

 ある朝、目を覚ますと俺は吸血鬼になっていた。カガミが無かったので姿形がどう変わっていたのか知るよしも無かったが……。

ちょっと大丈夫かなあ…とも思ったが、なんとかラストまで話を持って行ったので一安心。考えれば、針田さんもデビュー時はこんなだったかな…

「人間像」第116号(100ページ)作業、完了です。作業時間は「47時間/延べ日数9日間」でした。収録タイトル数は「2199作品」。裏表紙が久しぶりの更新。



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