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No.1066 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第119号 前半   引用
  あらや   ..2024/03/01(金) 05:56  No.1066
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二月中旬より「人間像」作業に復帰しています。丸本明子『花吹雪』、楢葉健三『あやつりの逃亡』、佐々木徳次『その男』、矢塚鷹夫『エデン』と来て、昨日(四年に一度のうるう日)針山和美『嫁こいらんかね』をライブラリーにアップしたところです。あと、朽木寒三『踊り子栄治影一勝負』、針田和明『迷界』を残すのみ。久しぶりの「人間像」作業ですが、意外と腕は鈍っていない。

 
▼ 嫁こいらんかね   引用
  あらや   ..2024/03/01(金) 06:02  No.1067
   二人を乗せたオートバイは、すがすがしい秋風を切って山を駆け降りた。
 途中の中山峠は細くて険しい砂利道である。一歩誤れば千仞の谷でもちろん命は無い。しかしおんちゃはあまりスピードもゆるめず右に左にカーブを切って駆け登った。雪子は声も出さずしっかりとおんちゃの腹にしがみついていた。
 頂上付近で一休みする。遠くに頂上を白く染めた羊蹄山がはっきりと輝き雪子を感激させた。
「わあ、綺麗だ。こうして広い景色を眺めていると下界の嫌な事なんかみんな忘れちゃうね」
(針山和美「嫁こいらんかね」)

この、たたみかける山麓の風景がたまらない。好きな針山作品は?、おすすめの針山作品は?と聞かれることがあると、いつもは『愛と逃亡』とか『百姓二代』とかと答えるのだが、たまに間違って『嫁こいらんかね』と答えてしまうこともあった。

 
▼ 踊り子栄治影一勝負   引用
  あらや   ..2024/03/04(月) 10:58  No.1068
  舞い込んだ舞い込んだ
御聖天が先に立ち、福大黒が舞い込んだ
四方の棚をながむれば
飾りの餅は十二重ね、神のお膳も十二膳
若親分、英七つぁんも末繁盛で
打ち込むところはサー、何よりもめでたいとナー
(朽木寒三「踊り子栄治影一勝負」)

やー、今回もサイコー。舞台も、私の好きな岩手県だし。

部屋の窓から見える小樽湾が少し碧(みどり)がかって来た。春かな。まさに、舞い込んだ、舞い込んだ…ですね。

 
▼ 迷界   引用
  あらや   ..2024/03/08(金) 11:00  No.1069
   かれこれ四時間あまり、僕は小説を読んでいた。あと十数枚で読みおわる。途中、三回電話がかかってきた。一回目は家族からであり、二回目は友人からだった。三回目は、むこうに人の気配はしたが無言であり、僕の声をじっときいているような無気味な電話であった。一体誰なのだろう、もしもしくらい言ってもよさそうなのに、と僕は思ったが、耐えられなくなってこちらからきった。柱にかかっている安物の時計が雨音に負けてなるものかといわんばかりにコチコチと音をたてている。その音は夜が深まるにつれて大きくなっていった。時を刻む音が規則正しいだけに、コチコチと無機質になる音をひとたび耳でとらえると、五分でも十分でもその音にのめりこんで聴いていることがある。そうしていると妙に僕の心が和んでくるのだ。
(針田和明「迷界」)

針山和美、朽木寒三、針田和明と、「人間像」大御所の三作品が並ぶのは壮観でした。針田氏の妙に沈んだ文体が気になる。

 
▼ 「人間像」第119号 後半   引用
  あらや   ..2024/03/08(金) 11:06  No.1070
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昨日、「人間像」第119号(134ページ)作業が完了しました。作業時間は「69時間/延べ日数13日間」、収録タイトル数は「2269作品」になりました。
裏表紙は第118号と同じですが、前回の画像があまり良くなかったのでもう一度載せます。

針山氏の『嫁こいらんかね』発表を受けて、この後、単行本『百姓二代』の復刻に入ります。もうワープロ時代に入っていますから、手書き時代のような細かな修正が入った清書原稿ではないのでしょう。そんなに作業時間はかからないと思います。ただ、『百姓二代』の大胆な修正には驚いた。

 
▼ 百姓二代   引用
  あらや   ..2024/03/17(日) 11:23  No.1071
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単行本『百姓二代』に載っている作品は、『百姓二代』、『傾斜』、『山中にて』、『嫁こいらんかね』の四篇。

「百姓二代」は昭和三十三年の作で最も古いものだが、また僕の二十代最後の作品でもあって愛着あるものである。結婚して初めての冬休みに何度か徹夜までして書いた思い出深い作品でもある。当時農村に住んでいた事もあり、百姓物に大きな関心を抱いていた。幾つか書いた中で比較的反響の良かったものである。
「傾斜」は、肝炎で長期間入院生活をしていた時の体験を生かして書いたもので、僕にとっては忘れがたい記念碑的作品である。病気そのものについては当時「病床雑記」(七〇〇枚ほど)に書いており、小説としては前集に載せた「三郎の手紙」くらいしかない。考えて見ればもっと書いて然るべきと思える。
「山中にて」は『京極文芸』に「敵機墜落事件」として書いたものを少し加筆し『人間像』に再掲したものである。まだ書き足りないと言う指摘もあったが、蛇足になるような気がして出来なかった。その辺が僕の限界らしい。
「嫁こいらんかね」はつい最近のもので、僕の目指すユーモアが少しは生かされたかなと考えている物のひとつである。
(針山和美「百姓二代」/あとがき)

雑誌発表形から、針山氏が何を捨て、何を足したかを知ることができる、私の大切な一冊です。復刻作業には、ここまで来た…という幸福感がありました。この気持を持って「人間像」第120号に入ります。



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