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No.1133 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第129号 前半   引用
  あらや   ..2024/11/17(日) 11:58  No.1133
  .jpg / 25.4KB

第129号作業、開始です。本日、佐々木徳次『椎の雨』をアップしました。この後、土肥純光『翳りある日々』、丸本明子『怒濤』、内田保夫『祀りの構図』、佐藤瑜璃『セピア色の薔薇』、針山和美『黄昏の同級会』、朽木寒三『奥山の砦』と続きます。
前号より表紙の絵柄が変わったように見えますが、描いてる人は変わりません。ずっと丸本明子さんです。

今日は朝から雨降り。この雨が明日には雪に変わるらしい。

 
▼ セピア色の薔薇   引用
  あらや   ..2024/11/23(土) 16:54  No.1134
   闇の中で電話のベルが鳴った。
 夢の中で二〜三度聞いた。少しずつ辺りの静寂の分だけ心臓を打った。東京の大学へ旅立って行った息子の顔が浮かんだ。とび起きです早く受話器をとった。
「ああ、季枝さん? 夜遅くごめんなさい」
 悪びれた声ではない、姑の菊乃である。時計は十二時をまわっている。舌うちでもしたい気分だ。
「あなた、昨日いらした時私のバックお持ちにならなかったかしら、黒のオーストリッチの……」
 季枝は思はずベットの上で正座した。
「なんですって? おかあさんのバックをどうして私が? ……それに、私、お伺いしたのは火曜日ですから、三日ですよ」
「私、明日ちよっと出かけますのにあのバックを持って行こうと思ったんですけれど、ないのよ、どこにも」
(佐藤瑜璃「セピア色の薔薇」)

冒頭から、持って行かれました。最後の一行まで、ほぼ完全試合に近い作品ではないだろうか。凄い人が同人に入って来たものだ。

 
▼ 黄昏の同級会   引用
  あらや   ..2024/11/24(日) 17:23  No.1135
   「モシモシ、わたくし浅田と申しますが、吉川小夜さんは御在宅でしょうか」
 電話の向こうは若い女の声である。
「あ、お婆ちゃんのことね。いま呼びます。」
 そう言って置かれた電話を通して先方の様子が伝わって来る、「お婆ちゃん、浅田さんって人から電話よ」 「浅田さん、はて?」 「なんだか若い人みたい」 「若い浅田さん、はて?」 「はて、はて、言ってないで、早く出ればいいじゃないか」 中年の男の声が急き立てている。
「ハイ、吉川小夜ですが……」
「小夜さんね。わたし、玉世」
「あれ、玉世さん? 若い人みたいだなんて言うものだから分からんでしょう」
(針山和美「黄昏の同級会」)

本日、『黄昏の同級会』をアップ。これで、次号の『四月馬鹿日記』を仕上げれば、単行本『老春』の全作品が揃うことになりますね。さて、明日からは朽木さんの『奥山の砦』に入ります。帰って来た斎藤昭。楽しみです。

 
▼ 奥山の砦   引用
  あらや   ..2024/11/30(土) 17:16  No.1136
   で、上がりがまちでゴム長靴に足をとおしながら、
「ほんじゃ、ユーコンつぁんによろしく言ってけろや」
 などと姉に言って、たちまち靴をはきおえてしまった。
 昭はとめることもできないし、もじもじと立ったままである。
 すると利三郎おじはその前を通り過ぎながら、ふと立ちどまり、気のない調子で昭にたずねた。
「犬っこ、ちっとはおぼえたか」
「うん」 昭は嬉しくて、にこにことうなずく。
「そうな、おぼえたか」
「うん、おぼえたよ」
 犬が一体何をどうおぼえたのか二人とも分からない。だがこれでやっとこさっとこ、仲直りがすんだのであった。
「ほんじゃ」
 と、おじは庭木戸の方へ歩きかけて、また立ちどまった。
「アキラあ、どうだ」と振り返る。「こんど折りを見て槻ノ木平の奥山さいくべと思うんだが、おめもいきてか」
「いぐ、いぐ!」
 昭は叫んだ。行きたいにきまっている。
「つれてってけろ、おんちゃん、いついぐんだ」
(朽木寒三「奥山の砦」)

斎藤昭、数え十五歳。『奥山の砦』、コンサドーレ札幌のJ2降格が決まった本日、人間像ライブラリーにアップしました。斎藤昭の物語をやっていたおかげか、冷静な気持ちで降格を受け入れることができました。



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