| 父が先生と呼んでいたこの二人は、フルネームが判らずじまいだったけれど、もう一人父が尊敬の念を抱いた表情で語っていて印象的だったのは、松崎天民という人だった。やはり東京からよく手紙や書籍が送られてきた。函館新聞社におられた頃に、独身だった父は時折り訪れては、半月くらい寄宿させていただいたものだと誰かに話しているのを聞いたことがある。東京といえば私にとって遠い他国のような感じで、父が「先生」という人がとても偉い人に思え、私たちとは世界の違う人という考えしかなかった。そして父もまた急に違った人間になったように感じられ、私はこの三人を思い出すと、いまだに不思議な感情におそわれるのである。 (佐藤瑜璃「父・流人の思い出」第五回/三人の先生)
ついに流人と函館の関係がつながった! そうか、松崎天民か。
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