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No.978 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第109号 前半   引用
  あらや   ..2023/04/24(月) 16:26  No.978
   夏から秋にかけて祭りを縫いながら深川―岩見沢間の鉄道沿線の町村を行きつ戻りつ巡業して、石狩川を渡し舟で浦臼にわたり、右岸沿いに晩生内、月形、当別、石狩と打ってゆき、霙ふる十一月下旬が小樽だった。人力車十七台をつらねビラを撤きながら華やかな町廻りをしたが、花園座の初日は二百人余りの客しかなかった。
 (中略)
 ここで考えついたのがおとぎ芝居≠ナ、数年前から巌谷小波や川上音二郎がそれぞれ試みていることは仄聞していたが、まだ北海道では誰も手掛けていない。咲次郎が、小樽でいちばん大きい量徳小学校へ交渉にいったところ、住吉定之進校長の返事は「二宮尊徳翁の少年期を扱うなら、当校ばかりでなく付近の小学校にも観劇の呼びかけをしたい」ということで、否やもなく日曜日の午後に決まった。
(千田三四郎「寒影」)

四月下旬より「人間像」第109号作業に入っています。本日、その『寒影』をアップしました。以下、内田保夫『明日の較差』、針田和明『さぶ』、丸本明子『ポピー』、神坂純郎『北の岬の村で』と続いて行きます。137ページなので先号とそんなに変わらないのですが、なにか、雑用がわらわら入って難航してます。古宇伸太郎から香山リカまでの人材を輩出した量徳小学校、もうないんですよ。

 
▼ 〈水脈〉五   引用
  あらや   ..2023/05/05(金) 17:39  No.979
   便船に間に合わせるための、早手廻しの荷造りが始まると、モモ代は夫共々手伝いに来て、この人が、と思うほどの甲斐々々しい働きぶりをみせた。
 (中略)
 その夜はさすがに母もなけなしの馳走をつくり、二人の労を犒うのだった。
「今夜は送別の前夜祭として、私のとっておきの歌を聞いて頂戴」
 モモ代はそう云うと、「ソルベイグの歌」のアリアを、しみじみした思いを込めて歌ってみせた。どこか本物の味のある、すばらしい出来映えに私には聞えた。この人は、やはり都会に出て暮すべき人なんだ、そう思った。
(神坂純郎「北の岬の村で」)

「ソルベイグの歌」ってどんなだったけ…と思って作業してたら、FMの「クラシックカフェ」からグリーグの「ソルベイグの歌」が流れてきた。NHK、久しぶりのナイス! アニソンだの、Jポップだの、英会話だの、なんでFMでこんなもんやるんだ…(作業妨害も甚だしい…)という最近のNHKではあります。

「水脈」シリーズも今回で第五回。『蹌踉の記』と話が一部重複するのだが、「水脈」の方は〈ヰタ・セクスアリス〉的な線を狙っているのかな。流れだと、劔地はこれで終わって、小樽話が始まるのだが。

 
▼ 「人間像」第109号 後半   引用
  あらや   ..2023/05/05(金) 17:43  No.980
  ■或る職場の先輩の定年退職激励会に出席し、席につくや否や、「針山さんですね」と声をかけられた。今の職場の同僚以外に知人などいるはずもない席だったので、「はて、だれだろう」と思ったものの、相手は満面に親しそうな笑みを浮かべているので、僕も、さも懐かしそうな笑みを返したが、「Iです。久しぶりです」と言われるまで、実は判らなかった。「あ、Iさん、本当にしばらくですね」と言うことになった。I君も、今回の先輩とどこかで職場を共にしたらしい。I君というのは、「人間像」三十号ころまでの同人で、三十年ぶりの再会であった。懐しい昔ばなしのあとで、「どうです、また『人間像』に戻って書いてみませんか」と誘ってみると、「もう従いて行けませんよ」と謙遜した後で、「年金でもついたらすぐ退職して、二三年勉強し直してから、またお願いしますか」と笑っていた。三十年もペンから遠ざかっていながら、やはり心の隅には文学の虫が生きているという様子であった。
■さて、本誌の同人もみな高齢化し、それぞれの職場を退職する日が近いものが多い。千田のようにすでに退職して年金生活に入ったものもいるが、「年金作家」もそんなに気楽ではないといっていた。(後略)
(「人間像」第109号/編集後記)

令和5年の「こどもの日」、「人間像」第109号(137ページ)作業、完了です。作業時間、「71時間/延べ日数12日間」。収録タイトル数は「2067作品」になりました。裏表紙画像は第107号、第108号と同じなので省略します。



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