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No.1120 への▼返信フォームです。


▼ 「人間像」第127号 前半   引用
  あらや   ..2024/09/26(木) 13:00  No.1120
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 今年七十五歳を迎えた小諸作太郎は、最近発表になった一九八九年簡易生命表がとても気になった。自分が日本人男性の平均寿命と同じところまで来たからだ。表によればあと九年ほどの余命がある事になってはいるが、それはあくまでも計算上の事で別に保証があるわけではない。格別長らえようと思っているのでもないのだが、いつお迎えが来ても誰も不思議に思わない年齢に達したかと思うと、思わないでも不安が込みあげて来るのだった。
(針山和美「忘却の傷痕」)

「人間像」第127号作業、始めました。本日、針山和美『忘却の傷痕』を人間像ライブラリーにアップしたところです。この作品、単行本にまとめる時には『老春』と解題され、謂わば単行本を代表する作品となって行くわけですね。
第127号は、この後、土肥純光『やがて眠りに』、内田保夫『黄葉季』、丸本明子『ガラスの兎』、佐々木徳次『還るべきところ』、千田三四郎『ゴミのような話』、平田昭三『たこ部屋ブルース』と創作が続きます。土肥さん、ずいぶん久しぶり。平田昭三は、朽木さんの別のペンネームですね。「斎藤昭」シリーズと混同しないように平田昭三を使ったのかな。


 
▼ ゴミのような話   引用
  あらや   ..2024/10/08(火) 13:23  No.1121
   いやな予感が当たった。おもだった人々のあいだで事前に根回しがあったらしく、自治会長の互選に入って、いきなり「小森さんにお願いできないでしょうか」の名指しに、打てば響く阿吽の呼吸というのか、「適任」「賛成」の声があちこちにひしめいた。
 慎二は虎挟みにかかった野獣のごとく逆らい、あげくは自分の多忙・病弱・未経験・無能を並べ立て哀訴嘆願したものの、誰一人その断りに耳を貸そうとはしなかった。寄ってたかって押さえ込むように理不尽な承諾を強いた。とことん拒み切るほどの鉄面皮にもなれず、不承ぶしょう総会を締めくくる羽目になった。
(千田三四郎「ゴミのような話」)

千田さんもこういう身辺雑記的な小説、書くんですね。単行本未収録だから面白く読みました。

 
▼ たこ部屋ブルース   引用
  あらや   ..2024/10/08(火) 13:26  No.1122
   ふしぎなご縁であなたとこうして親しくお話しすることになったんですが、まず前もってお願やらおことわりやらしておかなくちゃならないのは、私はふつうの人たちに比べたらこんにちまで多少は変化のある人生を過ごして来たものの、せんじつめれば札幌で一介のデンキ屋だった男です。そのくだらねえ人間のくだらねえおしゃべりを聞いて頂く間に、途中ああこれは退屈だとお思いになったら、どうぞ遠慮なく打ち切って下さってけっこうですよ(笑)。その方が私としても気楽ですしね。
(平田昭三「たこ部屋ブルース」)

なんか、仕掛けが多過ぎて、まだ読み慣れない。

 
▼ 私の山頭火 〈十〉   引用
  あらや   ..2024/10/08(火) 13:31  No.1123
   とうとう島にやって来た。
 平成二年六月十八日、この日は私にとって忘れられない日になるだろう。挨拶代りに編んだ詩集の発行が、間に合わなかったのが気がかりだが、残した人がやってくれるだろう。
 本当ならロタに住み込むところだが、とりあえずサイパンに腰を下ろすことにした。やりかけの仕事がまだ一段落しないためだが、サイパンで一先ず身体を慣らしてから、といった気持ちもないではない。
(神坂純「私の山頭火 十〉」)

波乱の多かった『私の山頭火』ですが、ついに最終回。同号ですかさず『サイパン日記』が始まりましたね。

 
▼ 「人間像」第127号 後半   引用
  あらや   ..2024/10/08(火) 13:37  No.1124
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「人間像」第127号(154ページ)作業、終了しました。作業時間、「63時間/延べ日数13日間」。収録タイトル数は「2406作品」になりました。

◇前号から数えて八ヵ月目の発行となった。八ヵ月も経つと世界も変わる。湾岸戦争が始まって、終わった。日本からは戦後初めて自衛艦が戦後処理とは言えペルシャ湾にまで派遣された。
◇さて、実に久方ぶりに土肥純光が戦列に加わった。長い間仕事に追われ、書けない不本意をかこっていた者たちが続々と職業から解放され、待ちに待った執筆活動に専念出来る事になったのである。本誌にもまた往年の活気がよみがえる気がして嬉しくなる。ちなみに今年新たに解放されたのは針山・北野・土肥・白鳥などである。年毎に同人の年齢が高くなるのは仕方ないとして、内容と量とで実の詰まった雑誌にしていきたいものである。『人間像』にはこれまで何度か活動期と言うか躍進期と言うか、誌面が充実した時期があった。瀬田栄之助・古宇伸太郎などが活躍した時代からこの方しばらくワーッと言う感じはなかったが、久しぶりにそんな活気が出て来るような気がしている。次号あたりからその芽生えが見えはじめるようだ。
(「人間像」第127号/編集後記)

湾岸戦争か… 後記でも触れている「人間像」第128号に早く取り掛かりたいので今日はこれで失礼します。262ページもある大冊なので、作業が終わる頃はもしかして初雪?



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