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今年七十五歳を迎えた小諸作太郎は、最近発表になった一九八九年簡易生命表がとても気になった。自分が日本人男性の平均寿命と同じところまで来たからだ。表によればあと九年ほどの余命がある事になってはいるが、それはあくまでも計算上の事で別に保証があるわけではない。格別長らえようと思っているのでもないのだが、いつお迎えが来ても誰も不思議に思わない年齢に達したかと思うと、思わないでも不安が込みあげて来るのだった。 (針山和美「忘却の傷痕」)
「人間像」第127号作業、始めました。本日、針山和美『忘却の傷痕』を人間像ライブラリーにアップしたところです。この作品、単行本にまとめる時には『老春』と解題され、謂わば単行本を代表する作品となって行くわけですね。 第127号は、この後、土肥純光『やがて眠りに』、内田保夫『黄葉季』、丸本明子『ガラスの兎』、佐々木徳次『還るべきところ』、千田三四郎『ゴミのような話』、平田昭三『たこ部屋ブルース』と創作が続きます。土肥さん、ずいぶん久しぶり。平田昭三は、朽木さんの別のペンネームですね。「斎藤昭」シリーズと混同しないように平田昭三を使ったのかな。
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