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信吾は港に立ってみた。 二十五年前、信吾が村の郵便局から他局へ移った頃、漁況は順調で各船主は競って漁船を大型化し、港の修復拡張工事も進められて、十年前には二倍以上にも広くなった港に、二十屯級の中型船が十隻も舳先を並べていたはずだが、その日の港には、僅かに五隻の中型と三艘の小型船が係留されているだけで、しかも中型船の内、勝美の第三神洋丸と前後して、山一大森の承久丸も廃船となる運命にあった。 (金沢欣哉「海が暮れる」)
第128号作業、始まりました。金沢さんの久しぶりの小説。しかも、久しぶりの漁村文学が胸に沁みる。この後、土肥純光『落影の女達』、佐藤瑜璃『帰郷』、丸本明子『迷路』、内田保夫『消えた女』、佐々木徳次『素晴らしき恋人』、針山和美『まぼろしのビル』、平田昭三『たこ部屋ブルース(2)』、村上英治『高瀬川(1)』、神坂純『サイパン日記(2)』と延々と続いて行きます。それでは…
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