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早いもので六冊目の作品集となった。最近に限ると一年一冊の割合である。原稿用紙にして四百枚ほど、六篇だから一年間の量としては決して多いとはいえないだろう。しかし、気ままに書いて行くぶんには恰度よいペースである。無理な駆け足で息を切らしても仕方がない。 去年の『老春』に引き続き、この集も老人物になってしまった。考えてみると「天皇の黄昏」から最近の「RVの老人」まで三年間に十三篇続けて老人ばかりを対象としたことになる。自分ながら少し「しつこいな」と思う。でも、この「しつこさ」が大事なのだと自分を納得させている。 (針山和美「北からの風」/あとがき)
六冊目か… 「しつこさ」と自嘲気味に言っているけれど、私にはとても切なく聞こえます。定年退職のあたりから憑かれたように毎号作品を発表し続けている針山さん。この『北からの風』に至っては、「人間像」の発行を待ちきれず未発表作品を三篇も加えています。時間がない。残された時間がない。2025年を生きている私は、もう針山さんの小説集はこの『北からの風』の後の『白の点景』一冊しかないことを知っています。とても切ないです。
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