| 夏から秋にかけて祭りを縫いながら深川―岩見沢間の鉄道沿線の町村を行きつ戻りつ巡業して、石狩川を渡し舟で浦臼にわたり、右岸沿いに晩生内、月形、当別、石狩と打ってゆき、霙ふる十一月下旬が小樽だった。人力車十七台をつらねビラを撤きながら華やかな町廻りをしたが、花園座の初日は二百人余りの客しかなかった。 (中略) ここで考えついたのがおとぎ芝居≠ナ、数年前から巌谷小波や川上音二郎がそれぞれ試みていることは仄聞していたが、まだ北海道では誰も手掛けていない。咲次郎が、小樽でいちばん大きい量徳小学校へ交渉にいったところ、住吉定之進校長の返事は「二宮尊徳翁の少年期を扱うなら、当校ばかりでなく付近の小学校にも観劇の呼びかけをしたい」ということで、否やもなく日曜日の午後に決まった。 (千田三四郎「寒影」)
四月下旬より「人間像」第109号作業に入っています。本日、その『寒影』をアップしました。以下、内田保夫『明日の較差』、針田和明『さぶ』、丸本明子『ポピー』、神坂純郎『北の岬の村で』と続いて行きます。137ページなので先号とそんなに変わらないのですが、なにか、雑用がわらわら入って難航してます。古宇伸太郎から香山リカまでの人材を輩出した量徳小学校、もうないんですよ。
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