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もう一人父が尊敬の念を抱いた表情で語っていて印象的だったのは、松崎天民という人だった。やはり東京からよく手紙や書籍が送られてきた。函館新聞社におられた頃に、独身だった父は時折り訪れては、半月くらい寄宿させていただいたものだと誰かに話しているのを聞いたことがある。東京といえば私にとって遠い他国のような感じで、父が「先生」という人がとても偉い人に思え、私たちとは世界の違う人という考えしかなかった。そして父もまた急に違った人間になったように感じられ、私はこの三人を思い出すと、いまだに不思議な感情におそわれるのである。 (佐藤瑜璃「父・流人の思い出(第五回)/交友・一/三人の先生)
800冊も持っていたプロレス本を売り払ったら、部屋は片付くし、思いがけない小金も入ったんですね。で、買ってしまいました。
北海道の図書館は全然といっていいほど松崎天民を持っていません。それで、頼るは国立国会のデジタル・コレクションだけという状態が長らく続いていたのです。でも、デジタル・ライブラリーって疲れるんだよね。一冊の本を開いていると、他の一冊を開くことができない。まるで集密書架の中で作業しているようだ。一箇所の書架を開けると、他の書架は閉じてしまうのによく似てる。まあ、人間像ライブラリーも同じ弱点を抱えているので、この文句には意味がないんだけど… だから、選集とはいえ、主要著作を紙媒体で手にしていられるのは本当に有難い。これからのライブラリーの展開に大きな武器になると思います。
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