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名古屋のNさんと、山の絵描きさんが下界の猛暑から脱出してくるという。これは何が何でも納涼しなければならぬ。前回、北八ッを徘徊したとき、冷山のことも掲示板に書いた。それで、おのずと冷山の黒耀石の大露頭が思い出されたのである。
名古屋のNさんとは冷山に登ったことがあるが、その山腹にある黒耀石の大露頭には行っていない。あれは観る価値があるし、静寂の苔の森は納涼にぴったりである。
去年、初めて大露頭を訪れたが、同じルートでは面白くないので、今回は、この大露頭探索を記録した『八ヶ岳の三万年 ー黒曜石を追ってー 』(小泉袈裟勝著・法政大学出版局)という、1987年に出版された本での探査行のルートをなぞってみることにした。
この本は、15年あまりに及ぶ、麦草峠近辺や冷山での黒耀石探査行の記録である。1978年、冷山の露頭を発見するまで、なんと4年もの歳月がかかっているのである。しかし、すでに50年近くも前のことである。森の様相もすっかり変わっていることだろう。
事情で、今回は山歩きはしないでスケッチをしているという山の絵描きさんに車の配置を手伝ってもらい、Nさんと私は山に入った。
人のものともケモノのものとも思える道を拾いながら登って行った。途中、作業道だったらしき痕跡をたどったりもするが、全行程の9割は苔の上を歩いていたように思う。
1度行ったところだから2度目はさほどの苦労はなかった。たどり着いた大露頭そのものは黒耀石の塊という感じはしないが、ところどころにガラス質が露出してギラギラと黒光りしている。
この上なく静かな森の中で長く休んだのち、苔の絨毯を踏み抜かないように注意しながら、デポしてあったNさんの車へと歩いた。
Nさん、山の絵描きさん、お疲れ様でした。
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