| 竹内紀吉『影』が収録されているので古書店から買った『小説の発見1』なのだけれど、『影』以外にもおーっ!と思った作品が二つあって、一つが以前書いた金子きみの『東京のロビンソン』。そしてもうひとつが、宇尾房子さんの『走る女』なのでした。 ところが、『東京のロビンソン』がすらすらと感想を書けたのに対して、『走る女』は一行の感想文も頭に浮かび上がってこない。ほんとに一言も浮かんで来ないんです。じゃあ、語るに値しない駄作かと言ったら、全然そんなことはない。これは何か重大な電波が放出されている作品であることははっきり感じるんだけど、巧く合致する言葉が私の文字パレットにはない…というか。 けっこう悶々としていました。竹内氏の作品を読み進んで行くと、その前後に宇尾氏の姿や作品がちらちらします。なにか、「人間像」の人たちにはあまり感じない質の電波であって、大変興味津々です。 こんな質量であろうか…ということを庄司肇氏が的確に書いていますので、そちらを引用させてもらいます。同人雑誌「朝」第29号「追悼・宇尾房子」に転載された、「千葉日報」2009年10月30日の庄司氏追悼文です。
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